戦型のサイクロン その3

将棋を指し始め、三間飛車と急戦居飛車、雁木を指していた私だったがあることに気付いてしまった。否、気付くべくして気付いてしまったのであろう。

主要な戦法が受け身なものであると。

三間飛車は当時は三間飛車藤井システムなんて無かった時代。攻める思考がなかった時代。完全に受け身な作戦だった。

雁木も似ている。当時の雁木の情勢を知らない方のための説明するが、ハチワンダイバーにあるような入玉狙いのものを指していたわけではなく、雁木+右四間飛車を主に指していた。攻める戦型と言われるこの戦型だが、棒銀や右四間飛車には受けるばかり。

そこで急戦将棋を指していた私は気付いてしまった。攻めの快感に、攻撃力の暴力に、受けを潰す魅力に。

そんなこんなで受け身な自分とはさよならバイバイしたくなった私は幾つかの攻める作戦の勉強を始めた。

角換わりと横歩取りゴキゲン中飛車と石田流だ。

これらの戦法を指し始めて私の将棋は大きく変わってしまった。

全体的に停滞してしまったのである。

将棋クエストで2〜3週間はレートが上がらない。新しい戦型を取り入れたときには往々にして起きていたことだが、情報処理が追いついていないのである。

特にゴキゲン中飛車横歩取り、後手番の戦型が難しい。

ゴキゲン中飛車は攻める中飛車であるが、攻めと引き換えに当時から大きな欠点を抱えていたように思う。

超速3七銀、丸山ワクチン、5八金右超急戦……どれを選んでも良くなる印象。どれを選ばれても攻めるに難しく、受ける展開が多い。さらに一手の重みが大きいのである。

居飛車急戦ばりに一手一手の重みがある。一手に多くの意味を込めて考えねばならない。

横歩取りは全く異なる。相居飛車で後手を持って殴り合う激しい戦型。ハチワンダイバー横歩取りは狙撃戦と言うが、その通り。更に知らない殺しが多くある。横歩取りは知らない変化に入れば一気に潰されてしまうのである。

後手番の横歩取り2三歩、4五角を経験した人であればわかるだろう。この戦法は非常に覚えねばならないことが多いのである。

更に選択肢も多い。後手を持てば横歩取り2三歩、相横歩取り横歩取り8五飛、対横歩取り青野流。

当時の流行もあって横歩取り8五飛戦法を選んだがこれも難しい。9四角の受けを覚えねばならない。更には先手には多くの変化がある。

自分の勉強した変化に入れば勝てるが、入らねば勝てない。辛いことこの上ない。

そして、このスランプ真っ盛りのタイミングで私は師匠とも言うべき人物に出会うのである。